第95章 【ソラニウカブ】
「……だけどさ、オレが声掛けてたら、小宮山、きっと、勇気でたじゃん?」
「それは……そうかもしれませんけど……でも……」
そうだよ、きっと、オレがなんか一言……
「こんなとこでどったの?」でも「じゃーねー」でも、何だっていいから声掛けてたら、せめてチョコ渡すくらいの勇気はでたはずなんだ……
「あー、もう!、あん時のオレのバカ!、バカバカバカ!!」
せっかくの小宮山からのチョコをもらい損ねたことへの苛立ちと、面倒だから、なんて気付かないふりをして、小宮山を無視したことへの後悔で、自分の頭をポカポカと何度も殴りつけた。
「そんな、英二くん、やめてください!、本当に私が渡せなかっただけですから……」
「でもやっぱ、オレがあん時、声掛けてさえいれば……」
そんなオレの後悔の声に、小宮山は少し困った顔をして、それから、でも……、そう言いにくそうに口を開く。
「例え渡せたとしても、英二くん、受け取ってくれなかったんじゃないですか……?」
「そ、それは……」
た、確かに……
あん時のオレなら、明らかな本命チョコなんて、受け取ってあとで面倒なことになんのが嫌だから、確実に断ってたに違いなくて……
なんて言ったらいいか分からなくて、うぐって言葉を詰まらせたオレに、だから渡せなくて良かったんですよ、そう小宮山はふふっと笑う。
「でも!、やっぱ、オレ、小宮山からのチョコもらいたかった!……そのチョコ、結局、どうしたのさ?」
「えっと……ペットショップの店長さんに……持ち帰るのも嫌でしたので……」
あのやろ〜!、オレがもらうはずだった小宮山の本命チョコ!
そんなふうに思いながら、脳天気な眼鏡ヅラを思い出して、プルプルと拳を握りしめた。