第95章 【ソラニウカブ】
「小宮山、12月になったらさ、駅前の並木道のイルミネーション、一緒に見に行こうにゃ?」
「あ、は、はい!、あの……私でいいん……」
「だから、小宮山がいいの!、シンボルツリーもさ、クリスマスツリーに変身すんじゃん?、きっと一緒に見たらもっとキレイだぞ?」
去年は、そのイルミネーションの下で寄り添う恋人たちを、くだんねー、なんて思って嘲笑ってた……
どうせこの後、やることやんじゃん?、さっさとラブホにでもいけよ?って……
今なら、あの時の恋人たちの気持ちが良くわかる……
大好きな人と一緒だから……大好きな彼女が喜んでくれるから……
「クリスマスも一緒だかんな?、お正月の初詣も、バレンタインも……」
冬は楽しいことが一杯で……
小宮山となら、その全てがすげー楽しみで……
ちょうど観覧車のてっぺん、そっと小宮山の肩に手を回して引き寄せると、目をパチパチとさせた小宮山が、なぜかクスクス笑い出す。
キスするつもりだったのに、その小宮山の反応に、小宮山ー?、そう不満げな声を上げた。
「ご、ごめんなさい、その……ちょっと、思い出しちゃって……」
「思い出したって……なにをさ?」
「去年……じゃないですね、今年のバレンタイン、私、英二くんにチョコ渡したくて……悪戦苦闘した挙句、結局、渡せなくて……」
マジで?、そう驚いて目を丸くした。
はい、本当に頑張ったんですけど……、なんて小宮山はさらにクスクス笑う。
「偶然、英二くんがネコ丸のこと、気にしてることをしっちゃって、それで、タオルを返す口実に……」
まさか小宮山が、チョコくれるつもりだったなんて思わなかった。
確かに小宮山がネコ丸を拾ったって知るまでは、あん時のネコ、どうなったかなー?って気にかけたりしたけど……