第95章 【ソラニウカブ】
「あ、ほら、英二くん、あの子たち、ちょうど帰るところですよ?」
「おお~!、ほんとだ、おーい、気をつけて帰るんだぞー?」
ふたり、並んで座った観覧車の中から、さっきの子どもたちを見つけて、もう一度手を振った。
ここからじゃ、聞こえませんよ?、そういいながらも、一緒に手を振ってくれた小宮山を微笑ましく眺める。
「あ、あっちには学校が見えますよ!」
「ほんとだ!、コンテナは……さすがに見えないかー……」
「いつもの公園も見えませんねー……もう少し上までいったら見えるかな?」
観覧車がゆっくりと上ってゆくにつれて、遠くまで街並みが見渡せるようになって……
夕日が夜の暗闇に飲み込まれる直前の園内と、その向こうの街は、キラキラと色とりどりの光が輝き始めていて……
キレイ……、そうさっきまで珍しくはしゃいでいた小宮山が、うっとりとした顔でため息を落とす。
やっぱ、遊園地にして正解だったな……
夏休み、小宮山と付き合う直前、大石の反省会のコンテナに連れてった。
小宮山は、そこから見える景色を、すげー嬉しそうに眺めていて……
だから、今回、小宮山とデートすることになって、大好きな遊園地に来ようと思って……
遊園地といえば絶叫系と同じくらい定番なのが観覧車で、最後は必ず観覧車に乗ろうと決めてきていて……
案の定、夕闇の中に光り輝く園内と、さらにその向こうの街並みを眺めて、うっとりとした顔をする小宮山を眺めながら、乗ってよかった、そう改めてこの景色を小宮山にみせてあげれたことに満足する。
「……英二くん、私たち、今、空に浮かんでますね……」
落ち着いた小宮山の声に、ん、そだね……、そうゆっくりと返事をする。
ガキの頃からずっと憧れて続けて、必死に手を伸ばして、それでも届かなかった遠い大空……
確かに、今、オレ、小宮山と二人で、
あの大空に浮かんでる____