第95章 【ソラニウカブ】
「ふふ……くっ、ふふふ……くくっ!」
「小宮山、笑いすぎ!もう、怒るよ!」
「ご、ごめんなさい!……でも……ふふふ!」
お化け屋敷から逃げ出した英二くんの様子がおかしくて、申し訳ないなって思うんだけど、どうしても笑いが止まらなくて……
先程、ループコースターの後に私が青くなって座ったベンチに、今度は英二くんが青くなって座っているのもおかしくて……
「ったく、小宮山はバカにするけどなー、学校の七不思議は本当に恐ろしいんだぞー?」
そんな風に細を膨らませて、唇を尖らせるその様子に、だから何がそんなに恐ろしいんですか?って聞いたら、不二にでも聞いてって言われて、でもそれが本物の不二かは分かんないけどね!、なんて不思議なことを言う。
「……あの、それって___?」
「あっ!」
どういう意味ですか?、そう聞こうと思ったその瞬間、英二くんは顔を上げて立ち上がり、それから急いで走り出す。
急にどうしたんだろう……?、そう思って彼が向かう先に視線を向けると、そこには持っていた風船から手を離してしまった男の子……
「あー!」
「何やってんの、ちゃんと持ってないから!」
まさか……、そう思った時には、ほいっと言う掛け声とともに英二くんが空へ逃げる風船の紐を見事にキャッチしていて……
周りがポカンとする中、今度は離しちゃだめだぞ?、そう言ってニイッと笑う英二くんに、あー、ヒーローのお兄ちゃんだ!、なんてその男の子は嬉しそうな声を上げる。
あ、さっきのヒーローショー、見てたのかな……?
「凄い!お兄さん、ほんとに空飛べるんだね!」
「そだよん〜?、ビームも出せるぞー、菊丸ビーム!」
英二くんはその男の子と暫く楽しそうに遊んであげていて、気がついたら他の子も周りに集まってきちゃって、もう一度、ヒーローショーが始まっちゃって……
子どもたちの中心で楽しそうに笑ってる英二くんを、微笑ましく眺めていた。