第95章 【ソラニウカブ】
「……小宮山、大丈夫……?」
「……は、はい……いいえ、やっぱり、ダメです……」
初めてのループコースターは、予想以上の衝撃で、来たばかりだというのに、しばらくベンチで休憩をする。
乗る前に話していた、高所恐怖症の方は本当に問題なかったんだけど、まさか、高所から落下するのがあんなに恐怖だとは思わなかった……
英二くんと並んで座った一番前の席。
ゆっくりと登っていく間、英二くんと楽しく話をしながら、遠くまで見渡せるようになった園内を眺めていた。
あ、落ちる時は叫んだ方が気持ちいいぞ?、なんて言われて、大声あげるの恥ずかしいな、なんて思いながらも、せっかくだから楽しまないとね、そう思って、努力します、なんて返事もしていた。
だけど、いざ、ガクンと大きく揺れて急降下が始まって、その速さと重力に飲み込まれた瞬間、やっほーい!、そう英二くんが楽しそうに叫んだのは覚えてる。
でも、私はすっかり恐怖で固まってしまって……
「小宮山、ほら、叫んで叫んで……って、小宮山?、ちょっと!小宮山ってば!」
そんな英二くんの叫ぶ声も、すぐ隣から聞こえてきてるはずなのに、私の耳には微かにしか聞こえてなくて、何度も繰り返す急上昇と急降下の間、必死に目の前のセーフティーバーを握りしめていた。
「ほい、小宮山、水、買ってきたよん?」
「……あ、すみません、ありがとうございます……」
英二くんからペットボトルのお水を受け取ると、ゆっくりと口に含んでため息をつく。
すっかり腰が抜けて、産まれたての小鹿みたいにカクカクしながら、英二くんに支えられてやっと腰を下ろしたベンチ……
ああ、地に足がついているって本当に素晴らしい……
それにしても、ジェットコースターってせいぜい時速100キロ強でしょ?
マッハの飛行機に乗ってすら、何ともなかったのに……
いや、ジェットコースターはわざと怖いように作っているんだから、当たり前なんだけど……