第95章 【ソラニウカブ】
「小宮山!、ほら、早く早く!」
「あ、はい、あの、そんなに急がなくとも、遊園地は逃げないかと……」
「逃げなくても時間が無くなるの!って、オレの寝坊が原因なんだけどさ……」
予想通り、遊園地に着いた途端、英二くんは「おお〜!」と目をキラキラさせて、それから、私の手を引いて走り出す。
小宮山、何のる?ってワクワクしながら、私に聞いてくれるけど、なんか、もう、真っ直ぐジェットコースターに向かってるような気がして……
「あ、あの、私は何でも……英二くんにお任せしますから……」
「マジ?、んじゃ、ループコースター!」
やっぱり、そう思いながら、一緒に並んだ列の最後尾……
下から首が痛くなるくらい見上げると、こんなに高いんだ、そう思わず圧倒されてしまう。
「小宮山、怖いー?」
「いいえ、高いなって……」
「もしかして、高所恐怖症……?」
「あ、それは大丈夫です」
オレはねー、高いところ大好き!、そう笑顔で続けた英二くんに、そう言えば英二くんのお気に入りの場所は、屋上の上にしてもコンテナにしても、たしかに高いところだなって思って、やっぱりそうなんですねって答える。
もちろん、ただ高いからだけじゃなく、空に近い場所って英二くんならではの特別な想いもあるんだろうけど……
そんな私に、あー、今、何とかと煙は高いところが好き、とか何とか思ったろー、なんて思ってもないことを言われたから、いいえ、そんな、そう慌てて首を横に振ったけど、申し訳ないことに、思いっきり納得しちゃって……
「いーや、その顔は絶対、思ってる!」
「あ、あの、ごめんなさい……そんなつもりはなかったんですけど……」
いくら英二くんが自分で言い出したことだって、やっぱり人にバカ扱いされたら、面白くないよね……
頬をふくらませて前を向いてしまった英二くんに、必死になって謝ると、英二くんはプーッと吹き出して、だから、小宮山、冗談通じなさすぎー、そう言って大笑いしだすから、またからかわれた……そう気がついて、今度は私が頬をふくらませた。