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【テニプリ】闇菊【R18】

第16章 【ヘンカトフアン】




「ネコ丸、んじゃね。」


部屋を出るとリビングで丸まって眠ているネコ丸に、英二くんがそう挨拶する。
ネコ丸は目も開けずに耳だけ声の方向に傾けると、しっぽをパタンと一度揺らしてまた眠りについた。


なんだよー、小宮山とられていじけてんの?、そう言って英二くんが苦笑いする。
それから、大丈夫だって、オレはとらないからさ、そうポツリと呟きネコ丸の頭をポンとひとなでした。


その言葉に私の胸がズキンと痛み、ザワザワが大きくなる。


玄関に座り靴を履く英二くんが、ここでいいよ、と私に背を向けたまま言う。
でも……と私も靴を履こうとすると、ほんといーんだって!、そうもう一度念を押されて何も言えなくなる。


本当にどうしたの……?
さっきから……なんか、変だよ……?


普段と違う英二くんのその様子に、どんどん大きくなる胸のザワザワに息苦しさを覚える。
泣きそうになるのを、それだけは、と必死に我慢する。


「小宮山……」


靴を掃き終えた彼が立ち上がり、ゆっくりと振り返り返る。
それから、ふーっと息を吐いた英二くんの、その節目がちな目から視線が外せなくなる。


何を言うの……?
そんな顔で、そんな声で、私に何を言うというの……?


俯いたままの英二くんが、小さな声で、あのさ……とゆっくりと口を開き始める。


「___オレさ、もう……」


イヤ、聞きたくない!!
お願い、それ以上言わないで!!


その次の言葉を聞くのが怖くて、耐えきれずに慌てて耳を両手で塞ぎ、ギュッと固く瞳を閉じる。


必死に堪えていた涙が、一滴こぼれ落ちた。

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