第95章 【ソラニウカブ】
「もしもし?、大石、なんかあっ……」
『ああ、英二!、休みのところ悪いな。実は大至急で、聞きたいことがあったんだ!』
通話に出るとすぐに、なんかあった?、そう問いかけるオレの声を聞き終わらないうちに、携帯の向こうで大石がそう声を上げる。
大至急でオレに聞きたいこと……?
その慌てる様子に、やっぱなんかあったんじゃ……、そう休み時間のざわめきを聞きながら、嫌な予感が胸をよぎる。
大石の学校は小宮山の中学と同じ大学付属校で……
周りのヤツらはみんな小宮山の元同級生で、しかも学校をあげてイジメをしてたやつらで……
もしかして、小宮山になんかまずいことが起きたんじゃ……
そう思ったら、もう嫌な予感は胸いっぱいに広がっていて、ガクガクと携帯を持つ手が震えてきて……
『英二の学園祭で食べたタコ焼きの作り方、今すぐ教えてくれないか?』
その瞬間、ドキドキしながら握りしめていたスマホを、思いっきり投げつけてやろうかと思った。
『もうすぐうちも学園祭があるだろ?、実はうちのクラスでもたこ焼きをやろうってことになってね。それで、この間の英二のたこ焼きを参考にさせてもらおうと思ったんだ』
小宮山がまたあの学校のヤツらに、傷つけられるかもしれない、そんな人の心配をよそに、大石が能天気な声を上げるから、全身の力が抜けてしまい、ヘナヘナとその場にしゃがみこむ。
大石、それってどうしても今じゃないとダメなことー?、オレ、急いでるんだけどー、そう恨めしく思いながら答えると、えぇ、ああ、すまない、でもこれから打ち合わせで……、大至急、頼むよ!、なんて大石が申し訳なさそうに返事をする。
あー、もう!、本当に大石ってばキングオブKYだよな!、なんてイラッとして、でも他でもない大石の頼みを無碍にもできなくて、仕方ないなってため息をついた。