第95章 【ソラニウカブ】
いくら小宮山を待たせてるからって、最低限の身だしなみは整えたくて、顔を洗って歯みがきをして、それから余計なところが跳ねちゃってる髪の毛をセットする。
あー、もう!、オレってば、テニスの試合でも学校行事でも、楽しみな時は朝早くから目が覚めるってのに、よりによって、今日はなんで寝坊なんかしてんだよっ!
小宮山を待たせているから、とにかく全力で準備する。
久々に本気出した菊丸印のステップ。
動体視力がいいやつが、今、オレを見たら、洗顔も歯みがきも、髪の毛のセットも、3人のオレがやってるように見えている。
……って、元は1人なんだから、分身で同時進行なんてしないで、ひとつひとつ順番にやりゃいいんだけど、気分的にこっちの方が、気合い入って早く準備できる気がして……
大至急で準備を終わらせて、そのまま玄関から外に飛び出すと、そうだ、電話!、そうポケットから携帯を取り出した。
小宮山、きっと心配してる……とりあえず通話をかけて謝んなきゃ!
LINEを開くと画面をスクロールさせながら小宮山のネコ丸をタップする。
無料通話を掛けようとした瞬間、パッと画面が切り替わり、着信音とともに表示された、大石の名前……
大石ーーー!!、なんだよ、この忙しい時にっ!!
相変わらず大石はこういう時、図ったように空気読めなくて……
まぁ、毎回なんだから、ある意味、すげー、読んでるのかもしんないけれど、とにかく何かと邪魔してきて……
あー、もう、今は大石どころじゃないての!
悪いけど、拒否するかんね!、そう頭を抱えながら、赤い拒否マークをタップしようとたところで、ん?って考える。
オレは休みだけど、大石って普通に学校じゃん?
創立記念日……なんて話も聞いてないし……
もしかして、すげー急用かもしんない……
小宮山、ほんと、ゴメン!
走りながら通話するからさ、そうきっと今頃オレを心配して待っているはずの小宮山に心の中で謝ると、大石からの通話をタップした。