第95章 【ソラニウカブ】
朝食を食べ終わってからも、やっぱり何を着ていこうか悩んで、もう一度、手持ちの服を片っ端から試着してみて、結局、最初にお母さんに見せた服で落ち着いた。
それから、寝不足の隈を何とかしようと格闘して、メイクしたりなんだかんだしてる間に、あっという間に時間は過ぎて……
「……英二くん、まだかな……?」
10時30分____
約束の時間をすぎること30分……
迎えに来てくれると約束した英二くんはまだ来ていなくて、時計の針とにらめっこしながら、今か今かとインターホンが鳴るのを待つ。
10時って言ったよね……?
うん、絶対、間違っていないはず……
確認の電話、してみようかな……?
でも、もうそこまで来ているかもしれないし……
それに、遠慮することないって言われたって、やっぱり私から電話をかけるのは、正直ためらってしまって……
いつまでもそんなこと言ってたら、英二くんに申し訳ないんだけど……
でもでも、もしかして、何かあったのかな……
やっぱりかけてみたほうがいい……?
英二くんのLINEを開いて、ぐるぐるぐるぐる、そんなことを考える。
さんざん悩んで、迷った挙句、なんとか覚悟を決めて通話をタップしたけれど、数十秒、コール音が続くだけで、虚しくも通話キャンセルの表示が現れる。
英二くん……本当にどうしたんだろ……
そう心配すると同時に、こう連絡が取れない状況になると、どうしても不安になってしまう……
英二くんはもう鳴海さんとはなんでもないのに、私のことをあんなに大切にしてくれるのに、こんな気持ちになるなんて、英二くんのこと、信じてないみたいで、自分が嫌なんだけど……
ダメ!ネガティブに考えたら!
そう慌ててブンブンと首を横に振る。
とにかく1度は着信を残したし、あとは大人しく待っているしかないよね……?
携帯を置いてベッドに視線を移すと、そこには呑気に寝ているネコ丸がいて、お前は本当に寝てばかりね、そう恨めしく思いながらため息をついた。