第95章 【ソラニウカブ】
「ねぇ、ネコ丸、この服、どうかな?……って、寝てる……」
まぁ、いいか、起きてたら、絶対、邪魔されるし……
そう熟睡するネコ丸を横目に見ながら、クローゼットの中の洋服を次から次と部屋中に広げると、1人でファッションショーを繰り広げた。
「……それで、一晩中、服を選んで寝不足なのね?」
え?、そのお母さんの声に、我に返って顔を上げる。
英二くんのことを考えこんでいて、お母さんの話を聞いてなくて、あからさまに戸惑った私に、目の下、また隈になってるわよ?、そう言ってお母さんは呆れ気味に笑う。
「まったく、一生懸命、着飾ったって、お肌荒れてたら台無しじゃないの……」
「そうなんだけど……でも、眠れなかったんだもん……」
明らかに寝不足の顔を手のひらで隠しながら呟くと、恋する乙女ねー、そうお母さんはクスクス笑うから、からかわないでよ!、そう言って頬をふくらませる。
「どこに遊びに行くの?、それによって服装って違ってくるでしょ?」
「そうなんだけど……英二くん、決めてないって……」
そう、最初からどこに行くって言ってくれば、こんなに悩むこともなかったのに、英二くんは良くも悪くも気まぐれで……
どこに行くんですか?、服の都合もありますし、そう問いかけた私に、んーって少し考えて、その時の気分で決めるー、なんて言い出して……
そんな私の答えに、英二くんは直感型なのね、そう言ってお母さんはまた苦笑いをして、でも璃音にはそのくらいの相手の方が、相性いいと思うわよ、なんてまた笑う。
「だったら、英二くんの好きそうな服で行ったら?」
英二くんの好きそうな服……?
あの、前にラブホで用意してもらった服は、趣味だからって訳じゃないよね……?
だったら……って少し考えて、でも、申し訳ないことに「脱がせやすい服」なんて酷い考えしか思い浮かばなくて、尚更、うーんと悩んでしまう。
そんな決断力のない私に、璃音も少しは英二くんを見習えばいいのに、そう言ってお母さんはヤレヤレと首を横に振った。