第94章 【ドウカシアワセニ】
「……ゴメンな、気づいてやれなくて……不安にさせて……」
『いいえ、そんな!、私が勝手に……』
「他にもあった?、オレ、気がつかない間に小宮山を不安にさせてた……?」
『……それは……』
もともと、オレは人の気持ちに鈍感なところがあって……
不二みたいに、察しがいいわけじゃなくて……
言葉にしてもらわないと、どうしても小宮山の不安を見逃してしまうから……
「ちゃんと言って……?、オレ、知りたい……」
『そ、その……でも……本当に私が勝手に……だから……』
「ん、教えて?、オレ、隠し事、されたくない……」
自分でもずるい言い方だと思う。
でも、こうでも言わなきゃ、小宮山はオレに本当の気持ちを言ってはくれなそうで……
『あ、あの……前に……私、英二くんのバイト先に、勝手に行ったことがあって……それで……』
マジで?、そう驚いて声を上げた。
ごめんなさい!、なんてすぐに怯えて謝る小宮山に、いや、小宮山、悪くないよん!、そう慌てて否定した。
小宮山、バイト先に来たことあったんだ……
それでも、オレに声をかけずに帰ったのは、きっと、そこでオレと芽衣子ちゃんを目撃したからで……
「ゴメンな……ビックリしたよな……?」
『……はい……』
いつ?、そう恐る恐る問いかけると、小宮山はしばらく沈黙したあと、英二くんがうちに来てくれるはずだった日に、迎えに行たら、その……、そう言いにくそうに呟いた。
「____っ!」
絶句、まさにその言葉がピッタリだった。
それはオレが思っていたより、ずっと小宮山を苦しめてたってことで……
その後、結局、小宮山を捨てたんだから、傷つけたのに変わりはないんだけど、それでも、余計に傷つけたことに違いなくて……