第94章 【ドウカシアワセニ】
『……え、あの、は、はい、その……でも、どうして……?』
「ん、まずは謝らせて?、ごめん!」
オレのその突拍子もない言葉で、あの、えっと……?、そうますます混乱する小宮山に、正直に芽衣子ちゃんを抱きしめたことを話して謝った。
本当は余計な心配をかけるから、言わない方がいいかと思ったんだけどさ、そう申し訳なく思いながら続けると、……いいえ、本当のことを言ってくれて嬉しいです、そう少し間を開けてから、小宮山はゆっくりと返事をした。
「……でもさ、聞かなきゃ、嫌な思いしなくてすんだじゃん?」
『……そうですけど……でも、隠された方が悲しいです……前だって……』
小宮山はそう言いかけて、あ、いえ、何でもないんです、なんてやめてしまうから、もしかして、前に、オレ、小宮山を不安にさせてた?、って問いかける。
『いいえ!、そんなこと……あの、その……』
「……オレさ、前にバイト帰り小宮山んちによった時、芽衣子ちゃんの匂い、させてた?」
帰ってこない返事、それは今、携帯の向こうで小宮山がなんて言っていいかすごく困っている証拠……
『あ、もう、私の香りが移りましたから、このあと、小宮山先輩に会わない方がいいですよ』
さっき、そう芽衣子ちゃんに言われるまで、本当に気が付かなかった……
女の匂いに鈍感になっていたオレのミス……
でも、本当のミスは、その時、小宮山の不自然な態度には気がついたのに、その理由を勘違いして、不安に気がついてやれなかったこと……
オレがちゃんと小宮山の不安に気がついてたら、きっと、あんな辛い思いさせずに済んだのに……