第94章 【ドウカシアワセニ】
何でだよ!、って思いながらも、芽衣子ちゃんが辞めたのはオレが原因なのは確かな話で、まぁまぁ、辞めちゃったものは仕方がないじゃん?、なんてみんなを宥める。
「菊丸くん、本当に辞めちゃうのー……?、菊丸くんにまで辞められたら困るよー……、菊丸くん目当ての女性客、結構いるんだからー……」
オレを責めるバイト仲間たちの声と、頭を抱えて涙を流す店長に、もう更衣室内は収拾がつかなくなっていて……
まぁ、芽衣子ちゃん、バイトの華だったし、みんなが落ち込む気持ちも分かるけどね……
「店長、とにかくオレ、辞めるのやめるからさ……泣かないでよ?」
オレが辞める理由はなくなったし……、そう店長を慰めるオレの横で、バイト仲間たちは相変わらず恨めしそうにオレを睨んでいた。
「いらっしゃいませー!」
「……ませー……」
「……えー……客、来たのー……?」
「お前らっ!、いい加減に立ち直れよな!、お客さま待ってんだろ!」
あからさまに落ち込むバイト仲間に苦笑いしながら、いつものように仕事に励む。
落ち込んでいるのはバイト仲間だけじゃなくて、店長がいうように芽衣子ちゃんがやめたと分かると、明らかにガッカリして帰ってく男性客もいたりして……
芽衣子ちゃんがいないと確かに店内は明かりが消えたようで、それほど芽衣子ちゃんがお店にとって、大切な存在になってたんだろうなって申し訳ない気持ちになって……
「あ、菊丸くん、そろそろ休憩入っていいよー?」
「ほーい、お前らぁ〜、オレがいなくてもちゃんと働けよな!?」
「へいへーい……」
ったく、大丈夫かよ……、そう思いながらスタッフルームに向かうと、小宮山にLINEするかなーなんてガチャリとドアを開ける。
「……あっ……」
ドアを開けた先、そこには何故か居ないはずの芽衣子ちゃんが立っていた。