第94章 【ドウカシアワセニ】
「……誠に勝手ながら、イッシンジョーのツゴーにより、バイトを辞めさせて頂きたく……なんか変だな……、あ、店長、ごめーん、オレ、バイト、辞めよっかなー?、なんて思ってんだよねー……って、流石にダメか……」
更衣室で制服に着替えながら、店長にバイトを辞めることをなんて切り出そうか、ブツブツと考える。
出来れば今すぐにでも辞めたいんだけど、なんて思いながらロッカーをバタンと閉めると、とりあえず店長のとこに行かなくちゃ、そう憂鬱に思いながらため息をつく。
「なーにー……?、菊丸くんも辞めちゃうのー……?」
うわぁ!、突然耳元から聞こえた暗い声に驚いて振り返ると、そこに居たのはまさに店長で、声と同じように今にも死にそうな顔をしながらオレを見ていて……
「ど、どったの?、店長……そんなオバケみたいな顔して……」
「……オバケは酷いなぁ、菊丸くん……んで、菊丸くんも辞めちゃうのー……?」
あって思って、うんにゃー、ちょっと色々忙しくなっちゃってって言いかけて、それから、オレ「も」?って疑問に思って……
「鳴海さんも辞めちゃったんだよねー……昨日、急に……ご両親に反対されたそうでねー……」
あ、先越された……
まぁ、芽衣子ちゃんだって気まずいだろうし、ご両親に反対ってのは確実に嘘だろうけど、もともとオレがいるからここでバイト始めたって言ってたしな……
そんなふうに思っているオレの後ろで、なにー!?、そう驚きの声が上がる。
驚いて振り向くと、更衣室にいた男たちがいっせいに頭を抱えていて、芽衣子ちゃんが辞めちゃったなんて……、そう絶望の声を上げていた。
「あーーー!!、なんの面白みもないバイトの唯一の癒しがーーー!!」
「菊丸が手ぇなんか出すからだ!!、だから親御さんが怒ってバイト辞めさせられたんだ!!、代わりにテメェが辞めやがれ!!」