第94章 【ドウカシアワセニ】
「あの、英二くん……その、すみませんでした……」
それから、しばらく、たわいもない話をしながら、二人でベッドに並んでコーヒーを飲んでいたけれど、そう意を決して英二くんに謝罪する。
だけど英二くんは、私の謝罪の意味がわからなかったようで、へ?、なんで?って驚いて、謝んのはこっちじゃん!そう逆に申し訳なさそうな顔をした。
英二くんにそう言われると戸惑ってしまう。
だって、英二くんには散々謝ってもらったから、もう謝ってもらう必要がなくて……
「やっぱ、小宮山、嫌だったじゃん……?、あんなの、見せちゃって、さ……」
そう気にしてくれる英二くんに、慌てて首を横に振り、そんなこと!、そう言ってそれを否定する。
だって鳴海さんと英二くんは昨日まで付き合っていたんだから、英二くんに鳴海さんのしるしが付いているのは当たり前で……
そりゃ実際に、あんなにたくさんの数を目の当たりにしちゃうと、ショックで辛かったけど、でも、やっぱり仕方がないことで……
ちゃんと割り切らなきゃいけないのに、英二くんに気を遣わせてしまった……
だいたい、嫌がる英二くんに無理やり見せてってお願いしたのは私だし……
やっぱり、ごめんなさい……、そうもう一度、英二くんに謝ると、さっき、私が上書きした目の前のしるしを、本音はまだ複雑な気持ちで眺める。
でも、もう、本当に「私だけ」ですからね……?
それを声にしたら英二くんを責めてしまうみたいだから、決して言ったりはしないけれど……
私って本当に欲張り……
こんなに大切にしてもらっているのに、鳴海さんより私を必要としてくれたのに、それでも、もっともっと、英二くんの特別でいたいって、そんな風に思ってしまう……