第93章 【ウワガキ】
数秒後、突然、オレに寄り添って来た小宮山に驚いて目を見開いた。
小宮山……?、そう戸惑いながら声を掛けたけど、小宮山は黙ったままで……
抱きしめていいものか、どうしたらいいか分からずに、そのまま固まってしまう。
小宮山はそんな戸惑うオレの鎖骨のあたり、くっきりと残る芽衣子ちゃんのキスマークに唇を寄せて、それからチクッと強い痛みを与えた。
その予想外の行動に、小宮山!?、そう驚いて声を上げると、小宮山はチラッと視線だけあげて、その隣のキスマークへと唇を移動させる。
「……私だけ、ですから……」
「へ……?」
「しるし、英二くんにつけていいの、私だけ、ですから……」
「あ……」
それはオレが小宮山に言った言葉……
まだ夏休み、小宮山のかーちゃんがイギリスに行っている間、ここに泊まり込んだ時に、小宮山の過去に触れて「小宮山だけ」そうその行為を許した……
オレがしるしをつけるのも、オレにつけていいのも、小宮山だけ……
だけど、小宮山はあの時、うっすらとつけただけで、その後、オレにしるしをつけようとはしなかった……
オレたちの最初が最初だったから、小宮山はいつもオレになかなか執着心をみせてくれなくて……
そんな小宮山が初めて見せてくれた、独占欲……
「……ここにも……」
今回はあの時とは違う……
一つ一つ、しっかりと、芽衣子ちゃんのキスマークの上に、小宮山のしるしを上書きしていく……
胸の次は背中……
小宮山がそっと撫でたところは、きっと、芽衣子ちゃんが爪を立てたところ……
痛そう……、ポツリと呟いて、それからゆっくりと舌を這わせる……
小宮山の気持ちを思ったら、不謹慎なのはわかってるけど、その刺激にゾクゾクして……
一旦落ち着いた欲望は、もう爆発寸前で……