第93章 【ウワガキ】
「……見たら、絶対、後悔するよん……?」
「平気です……私が望んだことだから……」
「……へーきなはず、ないじゃん……」
「……そうですね、平気、は嘘です……でも大丈夫……」
英二くんのことは、なんだって知りたいですから、そう相変わらず真っ直ぐに見つめられる。
その目に見つめられると、もうオレも覚悟を決めるしかなくて……
ゆっくりとオレの手をとった小宮山……
されるがまま、胸元から手を離す……
「……ボタン、外しますね……?」
震える指先で、小宮山がオレのシャツのボタンを外す。
一つ目を外した途端、その動きが固まった。
うん、そこに付いてる……
この前の……まだ、くっきりと……
「……ゴメン……」
絞り出した謝罪の言葉に、小宮山は我に返ったようで、大丈夫です、そうゆっくりと首を振り、さらにもう一つ、次のボタンを外していく。
シャツを脱がされて、Tシャツもそれ以外もすべて脱がされると、もう謝ることも出来なくて……
以前、芽衣子ちゃんが付けた消え掛けのキスマークですら、小宮山はあんなに傷ついて涙を流していた……
今回はあん時の比じゃない……
数も、濃さも、それから、それに至るまでの経緯も……
だけど今は、何も言わず淡々とした様子で眺めていて……
まだくっきりと残っているものから、うっすらと消えかけているものまで、まさに身体中に散らばっている芽衣子ちゃんのキスマーク……
これを見れば、誰だって理解できる……
オレが芽衣子ちゃんと、何度も繰り返して身体を重ねてきたこと……
小宮山の無言の視線は、まるでオレを責めているようで……
逃げだす事も出来ず、隠すことすら許されず、でもその視線に耐えられなくて、ただ小宮山から顔を背けて俯いた。