第93章 【ウワガキ】
「あ、あの……英二くん……私だけ、なんて……ハズカシイ、から……その、だから……英二くんも……」
小宮山のその言葉に、思いっきり動揺した。
普通だったら、そんなこと小宮山から言われたら、すげー興奮するところだけど……
でも、今は、言われるのが、一番、気まずい言葉で……
破きかけたゴムの袋を口から外し、そのまま外せるはずないシャツのボタンを握りしめた。
その瞬間、小宮山は顔を固まらせて、それから申し訳なさそうに俯いた。
その小宮山の様子に、ああ、小宮山、感づいたんだな、そう気がついて余計に気まずくなる……
そうだよ……外せるはずないんだ……
我慢しなくちゃ、いけなかったんだ……
分かってたはずなのに、昨日から、小宮山を抱きしめていると、どうしてもその先へと進みたくなってしまって……
見せられるはずないのに……
オレの全身に散らばる、芽衣子ちゃんが付けたキスマークなんか、小宮山に見せられるはず、ないのに……
すべて消えて、キレイになるまでは、我慢しなくちゃ、いけなかったのに……
「あ、あの……英二くん……私、見たい、です……」
オレのその様子に、俯いてしまっていた小宮山が、そう声を振り絞る。
その思いがけない言葉に、どうしていいか戸惑ってしまう。
見たいって、小宮山だって気がついているはずなのに……
気がついていて、それでも見たいって……
見たいはずなんか、ないのに……
そんな小宮山の真意が分からなくて、どうしたらいいか分からず、混乱してしまって……
「あ……ゴメン……オレ……」
「平気です……私、平気ですから……」
そっと小宮山の手がシャツのボタンを握るオレの手に重ねられる。
真っ直ぐにオレを見る小宮山の目は、いつもの、確固たる意志を秘めた力強いもので……
平気なはずないのに、小宮山のその視線を拒むことが出来なくて……