第93章 【ウワガキ】
「……小宮山、どこがいい?、ソファー?、ベッド?」
英二くんの指が私の体温とすっかり同じ温度になった頃、もう私にはその指の動きを拒む理由が無くなっていて、それどころか立っているのもやっとになっていて、そんな私を支えながら英二くんがそう問いかける。
「……ベッド……がいい……」
ギュッと英二くんの首に腕を回して、自分でも真っ赤なのがわかる顔を見られないようしがみつくと、ほいほーい、そう言った英二くんにヒョイっと抱えられた。
お姫様抱っこで連れて行かれる間、にゃあ、にゃあ、とネコ丸の鳴き声が聞こえていて……
それから、ネコ丸、久しぶりー、でもお前は後でねー?、そんなネコ丸をあしらう英二くんの声……
英二くんは迷うことなく私の部屋まで真っ直ぐに進むと、開けるよん?、そうちゃんと確認をとってくれるから、恥ずかしくて返事はできないけれど、コクコクと何度か頷いて精一杯の意思表示をする。
「お邪魔しまーす」
フワリと優しくベッドの上に下ろされる。
キシっと軋むスプリングの音がいつもより大きいのは、英二くんが私の上から覗き込んでいるから……
いつものなんてことない私のベッドが、英二くんと一緒だと、どんなお姫様のベッドより、ロマンチックなものになる。
それは英二くんだけが掛けられる、不思議な魔法……
そう、英二くんはまさに魔法使い……
不二くんのように文句のつけようがない王子様ではないけれど、どんな平凡なものでも、キラキラとひかり輝かせる魔法をかけてくれるの……
繰り返される英二くんのキスに、そんなふうにすっかり夢心地でいるんだけど、そう言えば、シーツっていつ変えたっけ?、なんてどこか冷静な部分もあって……
「あ、あの……英二くん、ちょっと、待ってくださ……」
「やだよん、もう待てないかんな?、昨日、2度もオアズケくらったんだからさ?」
すぐさま帰ってきたそんな返事に、2度?、そう首を傾げる。
1度目は多分、お姉さんが夕飯に呼びに来てくれた時……