第92章 【ケツイトマヨイ】
甘い……美味しい……!
覚悟を決めてパクっと口に頬張ったパンケーキは、英二くんのお兄さんが作っただけあって、生クリームとメープルシロップのハーモニーが絶妙で……
焼いてから時間が経ってしまっているけれど、そんなの感じさせないくらいフワフワで……
まるでお店で食べるような、絶品パンケーキなんだけど……
本当に、そう思うんだけど……
やっぱり、二日酔いの体調にはキツすぎて……
「もう、小宮山さん、やめなってば……」
「ダメです……せっかくのお兄さんの好意を無にするわけには行きません、私のために作ってくださったんですよね?」
「ま、まぁ……『JKは甘い物が好きに違いない!』なんて言って、ウキウキしながら作ってたけど……」
やっぱり、わざわざ私のために作ってくれたんだもん……
見ただけで「うぷっ」となりそうな生クリームは、さすがに二日酔いじゃなくても、ここまではちょっと……なんて思ってしまうほどの量だけど……
やっぱり、食べないなんて選択肢は有り得なくて……
「本当、小宮山さんって英二の言う通り、言い出したらきかないのね……」
「うんにゃー、頑固一徹とーちゃん、星飛雄馬もビックリ仰天あわわわわ〜ってね?」
なんかよく分からない独特の受け答えをした英二くんと、それを何事もないように受け流したお姉さんは、どちらからともなく食器棚から取り皿と、ナイフとフォークを持ってきて、私のお皿のパーケーキを取り分ける。
「あ、あの……?」
「だって小宮山、死んでも全部、食べるじゃん?」
「そうそう、みんなで食べた方が負担が少ないじゃない?」
だって、さっき、みんな残してたって……
胃もたれしそうって、言ってたのに……
「あ、あの、でも……」
「いーから、いーから、急いで食べる!、いやいや食べても美味しくないよん!」
本当に英二くんもお姉さんも、優しい……
突き合わせて申し訳ないなって気持ちと、付き合ってくれる嬉しさを噛み締めながら、お兄さんのパンケーキをまた口に運んだ。