第92章 【ケツイトマヨイ】
「それより英二、私にもちょうだい、朝からあんなの食べさせられて胃がもたれそう……まったく、おにいったら、いくら小宮山さんが女子高生だからって、あれはないわ……」
お兄さん……?
私が女子高生だから……?
意味が分からず首をかしげてしまうと、そんな私を気にする英二くんの顔が一気に青ざめていく。
「うわっ!、ねーちゃんのバカ!」
「はぁー?、なんであんたにそんなこと言われないといけないのよ!」
焦る英二くんと、怒るお姉さんのやり取りを眺めながら、お兄さん……私が女子高生だから……そうもう一度繰り返す。
それから、ふと思いついたある考え……
「……英二くん、お兄さんの作った朝食ってなんですか?」
英二くんのおうちはご両親共働きだから、以前から朝食は当番制って聞いていた。
この話の流れで考えられるのは、今朝の当番はお兄さんで、お兄さんは私のためにメニューを考えてくれたってこと……
「さ、さぁ~?、オレにはなんのことだか……」
「あるんですよね?、食べますから、出してください」
こんな時、英二くんの嘘はわかり易い。
絶対、私の目を見ないから……
「だから、小宮山には内緒にしとこうと思ったのに……ビックリするよん?」
大きなため息をつきながら英二くんが持ってきたのは、言葉を失うほど生クリームてんこ盛りのパンケーキ……
えっと……、そう次の言葉が出てこない私に、二日酔いにはキツイかんな?、なんて言って英二くんが苦笑いする。
「ちょっと、小宮山さん、食べる気?、こんなのみんな無理だってほとんど残してたよ?」
「いえ、大丈夫です、ちゃんといただきます」
黙ってナイフとフォークを用意してくれた英二くんに、ありがとうございます、そうペコリと頭を下げる。
すーっと大きく息を吸うと、もう1度、いただきますと両手を合わせて、それからゆっくりとパンケーキにナイフを入れた。