第91章 【シアワセナヨル】
「英二くん!、英二くん!」
そんな小宮山を微笑ましく眺めていると、大五郎を抱えたまま小宮山がオレを呼び、大五郎にチュー、なんて言いながらその口にキスをする。
それから、妬けちゃう?、ねぇ、妬けちゃう?、そう小首をかしげて何故か得意げに笑った。
「ん、妬いちゃう……オレにもシテ?」
いくらオレだって、ぬいぐるみには妬かないけどさ……
でも、せっかく二人きりになれたんだ、なんもしないなんて言ったって、こんなレアな小宮山を黙って放っとくなんて有り得なくて……
両手を広げて小宮山を待つと、へにゃっと嬉しそうな顔をした小宮山がヨロヨロとオレの胸の中にダイブする。
フワッと触れた唇、嬉しい?、そう覗き込む小宮山に、サイコー、そう言って思いっきり抱きしめた。
「もっかい、シテあげる?」
「……シテくれんの?」
上目遣いで伺うように見てくる小宮山にそう問いかける。
小宮山からキスしてくれるって話だけど、つい我慢出来ずにオレから近ずいていく。
至近距離、もう一度、唇が触れるその直前、シテあーげない!、そう言って小宮山はクスクス笑い、サッとオレの腕から抜け出した。
「大五郎には何回もシテあげるー!」
オレの腕の中から抜け出すと、また大五郎のところに行ってしまった小宮山を眺めながら、……なんでだよ、そうがくりと肩を落としてため息をつく。
ったく、この酔っ払い、そう恨めしく思いながらも、大五郎のほっぺや口に「チュー」と繰り返すその相変わらずの無邪気さに、自然と頬が緩んでくる。
それから、フワッと可愛いあくびを一つ……
虚ろな目を擦り、眠い……、そうポツリと呟いた小宮山は、大五郎のお腹に頬擦りして、それから、身体を丸めて寝る体制に入った。