第91章 【シアワセナヨル】
ゴホン、そう咳ばらいして視線を逸らすとーちゃんや、目のやり場に困っている兄ちゃんたちから、小宮山を隠すように慌ててその身体を抱きしめる。
「……英二くんらぁ……」
途端にオレの背中に腕を回して嬉しそうに頬擦りしてくる小宮山は、もうどうしようもなく可愛いんだけど、そのままゆっくりその柔らかさを堪能したくなるんだけど、本当にそれどころじゃなくて……
「あのさ、頼むから小宮山、オレの部屋に連れてっていい?、絶対何もしないって約束するから!」
そんなオレの必死の訴えに、さすがのかーちゃんやねーちゃんたちも、渋々だけど、仕方が無いわね、なんて許してくれる。
このままねーちゃんたちに連れていかれたら、小宮山の肌どころか、オレの黒歴史まで全部晒されるに違いなくて……
良かった、そう胸をなでおろすと、小宮山、行こ?、そう言って千鳥足の小宮山を連れて部屋へと急いだ。
「あーい、とーちゃく、れーす!」
フラフラする小宮山を支えながら、なんとかオレの部屋にたどり着くと、相変わらずのハイテンションの小宮山は、そう嬉しそうにオレから離れて、そのまま勢いよく大五郎に抱きついた。
「だいごろー……フワフワ、柔かーい……」
大五郎に頬ずりする小宮山を眺めながらベッドに腰を下ろすと、ヤレヤレ、そう溜息をついて頭を抱えた。
軽い気持ちで飲ませたアルコールで、しかもたったひと口でこんな大騒ぎになるなんて……
それにしても……小宮山、酔っ払うと、無邪気だな……
呂律の回らない言葉遣いで、大五郎を抱えてキャッキャッとはしゃぐ様子は、まるで小さな子どものようで……
普段の物静かで知的な態度とは、まさに正反対で……
こんなのも、悪くないかもしんない……