第91章 【シアワセナヨル】
そっと小宮山に渡したカクテルの缶を持ち上げてみる。
それはやっぱり殆ど減っていなくて、アレ以上飲んでいないのは明らかで……
小宮山、こんなに酒に弱いのかよーーー!?
今まで、あのカラオケ屋でいろんな女と飲んできたけれど、みんなこんくらい普通にガンガン飲んでいて、強い弱い人それぞれだけど、これ程の量でこんなにハイテンションになった女なんて見たことなくて……
ふふふ、うふふふふ、そう笑いながら、右に左にユラユラ揺れる小宮山を眺めながら、いや、可愛いけど……そう苦笑いする。
「ああ、もう、人様からお預かりした大切なお嬢さまなのに……」
「あんた、小宮山さん酔わして何しようとしたのよ!」
思い切り飛んできたゲンコツ、だから、酔わすつもりなんか無かったって!、そうかーちゃんとねーちゃんに抗議するオレを見て、小宮山はまた、ぷぷぷ!と面白そうに笑っていた。
「……とりあえず、小宮山さん、もう寝よう?、ほら、一緒に部屋に……」
「イヤれす〜、コレ、美味ひい……もうちょっと……」
小宮山の心配をしたねーちゃんたちがそう声をかけると、小宮山はそれを拒んで、先程、オレが渡したカクテルに手を伸ばす。
流石にこれ以上はやばいだろ、そう慌てて小宮山が缶を手にする直前、サッとそれを奪い取る。
「小宮山、コレはまた今度なー?」
「えー……英二くんのイジワル……英二くん、イジワル?……あっ!、菊丸エイジワル!!」
小宮山が壊れたーーー!!!
きっと真面目な小宮山にとっては、これ以上にない傑作なギャグなんだろう……
ぷぷーっと吹き出すと、お腹を抱えて机に突っ伏し、さらには足をばたつかせて大爆笑している。
「アルコールって、怖いね……こんなに人格変わるんだ……」
「そうよ……よく、肝に銘じなさい……」
英二くんのイジワル、エイジワル!、そう何度も繰り返しながら笑い続ける小宮山を、しばらくの間、顔をひきつらせたまま眺めていた。