第91章 【シアワセナヨル】
「……英二」
とーちゃんの声に、うへっ、と首をすくめて、そろっと目を開ける。
表情はいつもと変わらない、だけど声のトーンだけはすごく低い……
「法律で禁止されているものにはしっかりとした根拠がある……考えなさい」
そう続けるとーちゃんの説教は、相変わらず、最低限の言葉だからか、ズシンと重みがあって……
普段はぎゃーぎゃーうるさいかーちゃんもねーちゃんたちも、こんな時はピタッとその口を閉じて、しっかり立場をわきまえていて……
「……ごめん……もう大人になるまで飲まないから……」
「ああ……、お前と一緒に飲める日を今から楽しみにしているからな」
本当はタバコを怒られた時、アルコールも辞めればよかったんだけど……
ん、オレも、楽しみにしてる……、そう声を振り絞ると、そっとかーちゃんが頭を撫でてくれた。
「ふふ、くくっ、ふふ、うふふふふ……!」
突然響いた笑い声に振り返る。
コレって……信じられない思いで見たものは、ほんのり赤い顔した小宮山の笑顔……
「あはは、やーい、英二くん、怒らりたーーー!」
……っていうより、爆笑ーーー!?
苦しそうにお腹を抱えて、涙まで浮かべて、なんか呂律も回ってなくて……
こんな小宮山、当然だけど、今まで見たことなくて、正直、本当に小宮山?、そう戸惑ってしまう。
「えっと、小宮山、どったの……?」
って、聞かなくても、思いっきり、想像はできて……
想像、というより、それ以外、考えらんなくて……
これって、どう考えても、酔っ払ってるよな……?
「英二!、あんた小宮山さんにどれだけ飲ませたのよ!」
「どれだけって……ひとくちしか……」
「これがひとくちのはずないでしょ!」
そうだけど……でも、小宮山は確かにひとくちしか飲んでなくて……
あのあと、オレがとーちゃんたちと話してる間にもっと飲んだ……?
いや、あの小宮山が酒だと分かった以上、もっと飲むなんて有り得なくて……