第91章 【シアワセナヨル】
……で、こうやって小宮山が風呂から上がるのを、今か今かと待ちわびているわけだけど……
ウキウキする気分とは裏腹に、さっきから携帯の画面を深刻な顔で眺めている。
そこには明らかに小宮山を中傷する書き込み……
ビッチだの、淫乱女だの、好き勝手言われてる……
そりゃ、あんな派手に、大勢の前で抱きしめあったんだ、言われない方がおかしいんだけど……
でもこんな時、男のオレよりも女の小宮山の方が断然わるく言われるのは、人間の深層心理ってヤツ……?
芽衣子ちゃんを実際に裏切ったオレはさほどでもないのに、本当はなんも悪くない小宮山のほうばかり、ひどい言われようで……
不二のファンの怒りは相当なもので、まぁ、オレのファンも騒いではいるけど、とにかく、その怒りは簡単に収まりそうにもなくて……
小宮山はきっと「慣れてるから平気です」って笑うだろうけど……
本当に慣れるなんてこと有り得ないのに「気にしないでください?」って笑うだろうけど……
LINEの友だち欄をスクロールして、市川の名前を探し出す。
見つけ出してトーク画面に移ると、少し考えて文字を打ち込む。
『小宮山のこと、頼むよ。オレも全力で守るからさ……』
まぁ、市川は正義感が強いやつだし、前に小宮山がイジメにあった時だって、堂々と異議を唱えてたから、オレが言う必要なんかないと思うけど……
数秒後ついた既読文字に、すぐさま届いた『当たり前でしょ』の返信文。
それは、小宮山を頼まれてくれることなのか、オレが全力で守ることなのか、それとも両方なのか……
とにかく、市川がいてくれれば安心だよな……
オレだって、不二に言われて渋々だったあん時とは違う。
誰に言われたからじゃない。
今度は、オレが、
全力で小宮山を守るから____