第15章 【アマクテニガイ】
さて、帰るか……そう思って服に手をのばすも、静かに寝息をたてる小宮山が視界に入り、んー……っと考え込む。
流石にこのまま帰れないか……小宮山のかーちゃん帰ってきて、この状況を発見されたら、いくらなんでも可哀想だもんな……
家の鍵も開けっぱって訳にいかないし……
時計を確認すると5時を回ったところ。
かーちゃん帰ってくんの、7時くらいって言ったっけ……
とりあえず、一時間くらい寝かせてやったら起こしてやるか、そう思いながらもう一度ベッドに潜り込み、小宮山の隣に横になるとそっと髪を撫でる。
んー、とりあえず、目の毒だからコレ、掛けといてよ、そう呟くとタオルケットで小宮山の身体を隠した。
つーか、ヤバイ、オレも寝そう……それだけはぜったい我慢しないとな……
襲う眠気から気を紛らわすために小宮山の部屋を見回すと、目に留まったのは小難しそうな本がびっしり詰まった、学年首席らしい本棚。
それとは対象的な女の子らしい机に置かれた、付箋だらけのファッション雑誌。
ドレッサーの上に並ぶ数々のメイク道具やスキンケア用品。
それからセンスの良い雑貨に可愛いぬいぐるみの数々。
脱がせて床に無造作に置いた、甘すぎず地味すぎずな小宮山によく似合うワンピース。
下着だっていつも上下セットの可愛いものを付けている。
そういや小宮山、グリム童話を繰り返して読んでるって言ってたし、ペットにオレの名前もじって付けちゃうあたり、案外女の子らしい夢見る乙女、なのかもねん……?
学校ではあんなにツンツンしてっけどさ……
だからほんと、オレなんかやめとけって……?
そう言って夢の中にいる小宮山の頬を指でそっと撫でると、くすぐったそうな顔をして笑った。