• テキストサイズ

【テニプリ】闇菊【R18】

第90章 【カンゲイ】




それにしても本当に痩せている……ううん、痩せ細ってる……
こんなに細い子、見たことない……
もともと大きな目が、その細さから、尚更、目立って見えて……


「英二がうちに来た日よ……痩せてるでしょ?」

「はい……凄く……」

「これでもだいぶマシになったらしいんだけどね……保護された時より……」


ずっと黙っていた上のお姉さんが、そっと口を開く。
小さく頷くとまた暫く、沈黙が続いた……








誕生日にクリスマス、入学式に運動会……
生まれた時から当たり前に愛されてきた私にとっても特別な行事だけでなく、家族で出かけたり夕飯後の団欒だったり、普段の何気ない日常ですら、きっと英二くんにとっては全てが特別なものだったに違いなくて……


ページをめくるごとに、少しずつ増えていく笑顔……
子供らしくなっていくその様子に、ご家族の強い愛情を感じて涙が溢れてくる。


「小宮山さん!?」

「あ……、すみません、なんか、色々、込み上げてきちゃって……」


最後のページまでくると、そっとアルバムを閉じる。
まぁ、分かっててもビックリしたよね……、そう申し訳なさそうにするお姉さんに、はい、でも、それだけじゃないんです……、なんてゆっくりと首を横に振ると、パラリともう1度、表紙を開く。


不安そうに、でもぎこちなく笑う英二くんの笑顔をそっと指でなぞる。
英二くんの心の奥底には、きっと、この頃の英二くんがずっと居続けているんだね……


英二くんが過去にもがき苦しんでいるとき、それを家族には頑なに隠し続けた理由が、この一冊に全て詰まっているような気がして……


数枚めくった先の写真、大五郎を抱えて眠る英二くんの頬には、うっすらと涙の跡が残っていて……
本当、こんなに小さい時から、大五郎は英二くんにとって、全てを受け入れてくれる唯一の存在だったんだね……


そんなふうに思ったら、大五郎に感謝すると同時に、そんな存在でいられたことが羨ましくて、可笑しいけれどほんの少しだけ妬けた。

/ 1433ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp