第90章 【カンゲイ】
「あ、あの、気にしないでください、私、平気ですから……」
お姉さんが気にしないよう、慌てて両手を振って笑顔を向ける。
平気ですから……、それはもちろん本心のつもりだけれど、その一方で、あー、英二くん、ご家族に鳴海さんを紹介してたんだ……、なんて少しだけ胸がチクンとする。
「あ、でも、あの子、無理やりおしかけてきただけだから!」
「そうそう、英二も驚いていたもんね?強引な子だったわよね」
「強引っていうより、図々しいよ!」
「コラ、それは言い過ぎ!」
必死にフォローを入れてくれるお姉さんたちに、私も、無理やり押しかけてきたようなものだけど、なんて苦笑いしながらも、気を遣わせてしまって申し訳ない気持ちになる。
それから、私へのフォローの為に、ネガティブに言われてしまった鳴海さんへも……
「あの、でも、鳴海さん、一生懸命だったんです……私のことを気にしてたから……それに、英二くんのことを想う気持ちは、私と同じだから……」
同じだから……同じだけど……
英二くんと鳴海さんには、私には入り込めない絆があって……
「鳴海さん、凄く辛くて、英二くんも本気で彼女に寄り添いたいって思っていて……でも、私を選んでくれて……だから、その……」
だんだん、自分でも何を言いたいのか、わからなくなってくる……
お姉さんたちの視線を感じて、なおさら焦っちゃって、言いたいことがまとまらなくて……
「……本当は私よりずっと、鳴海さんの方が、英二くんを必要としているのに……でも……やっぱり……とにかく、その……ヨロシク、オネガイ、シマス……」
って、私、なにまた挨拶してんのー!?
もう、自分の余裕のなさに情けなくなってくる。
引かれてる……絶対、変な子って思われてる……
そう思うと、とにかく恥ずかしくて……
スミマセン……そう真っ赤な顔で小さくなりながら謝った。