第90章 【カンゲイ】
「本当に構わないの、ここでタンスの肥やしにしてたってしょうがないしね?」
「でも……やっぱり……」
制服なんてそう気安く貰えるものでは無いし、どうしても受け取れないでいる私に、お姉さんも何度も食らいつく。
あんまりしつこく言うと、小宮山さん、困っちゃうよ?、なんて上のお姉さんは声をかけてくれるんだけど、やっぱり納得出来ないようで……
「ねーちゃん、んなこと言ったって、小宮山は言い出したらきかないよん?」
突然、ドアが開いて入ってきたのは、お布団を両手に抱えた英二くん……
ちょっと、ノックくらいしなさいよ!、そう文句を言うお姉さんに、それ、ねーちゃんが言うー?、なんて言って英二くんが苦笑いをする。
「だいたい、ねーちゃんの制服じゃ、胸んとこ、きついんじゃないのー?」
「何ですって!……って、まぁ……ちょっと失礼?」
突然、お姉さんに胸を掴まれ、キャッ!と悲鳴をあげて仰け反ると、うわー!っと私より大きい声で英二くんが怒り出す。
ねーちゃん、なんてことするんだよ!、そう言って思い切り後ろからだき抱えられて、そのままズルズルと引きずられながら距離を取られた。
「なに勝手に触んだよ!オレのおっぱい!!」
「はぁ?、あんたのおっぱいじゃないでしょ!」
「オレんだよ!、小宮山の身体は、頭の先から爪の先まで、髪の毛一本だって全部オレのって決まってんの!」
あ、ああ……、恥ずかしくて顔が火を吹くかと思うほど熱くなる。
それは突然英二くんに抱きしめられたからか、嬉しい言葉を言ってもらえたからか、それとも、直接的な言葉の応酬ゆえか……
「オレのおっぱい!」
「あんたのおっぱいじゃない!」
とにかく、しつこいくらいに繰り返される「おっぱい」発言に、恥ずかしさはますます大きくなっていって、段々、それは怒りに変わってきて、これって、英二くんと付き合い始めたときに、かわむら寿司でからかわれた時と同じパターンじゃないの?って思って……
いやいや、今回は英二くんだけじゃなく、お姉さんも一緒だから、いくら何でもキレるわけにはいかないんだけど……