第90章 【カンゲイ】
夕食を終えると、あ、手伝います、そう言ってお手伝いを申し出る。
「えー、んなことしなくていいじゃん!、小宮山はオレと一緒にいるために泊まりに来たんじゃないのー?」
「でも、もう元気じゃないですか……」
いいのよ、火傷もしてるんでしょ?、そう英二くんのお母さんは言ってくれたけど、いいえ、もう平気です、手伝わせてください、そう言いながら美沙に巻いてもらった包帯をさっと外す。
それじゃ、お願いしようかな?、そう言ってお母さんは嬉しそうに笑ってくれた。
良かった……
準備の時は何も出来なかったし、せめて後片付けくらいはね……?
まぁ、手伝っていたら、とんでもない事になっていただろうけど、なんて、内心、苦笑いをしながら、食洗機に入り切らないお皿やお鍋を、お母さんと一緒に洗っていく。
ワハハハとリビングから響いくるのは、お父さんやお兄さんたちの笑い声……
晩酌の延長で本格的に飲みだしたようで、リビングに場所を移動して盛り上がっている。
話の内容は、英二くんを私とのことでからかっているのかな……?
近所迷惑でしょ!、そう隣でお母さんが大声で注意して、思わずビクッと肩を震わせた。
「ごめんなさいね?、食事の時もだけど、騒がしくてびっくりしたでしょ?」
「はい、あ、いいえ!……すごく楽しいです。うちは父が単身赴任で、いつも母と二人きりだから……」
「あら、そうなの?、小宮山さん、ご兄弟は?」
「一人っ子です。だから大家族って羨ましくて……」
そんな私とお母さんの会話に、えー、兄弟多いと面倒だよ、そう食卓の上を片付けながら、お姉さんたちが不満げな声を上げる。
「朝なんて洗面所もトイレも戦争だしねー!」
「英二なんか男のくせに、ハミガキも髪の毛のセットも異様に時間かけるしね!」
そう文句を言いながらも、その言葉はぜんぜん本心ではなさそうで……
前に来た時も思ったけれど、家族みんなが英二くんを可愛く思っているのがヒシヒシと伝わってきて……
英二くんがご家族に心配をかけたくないと強く願う気持ちがとてもよく分かって、胸のあたりが熱くなった。