第89章 【カイホウ】
「そっか……桃が……」
桃が芽衣子ちゃんを追いかけてくれたと知って、調子がいい話だけれど、胸がスっと軽くなった。
それから、芽衣子ちゃんが桃に心を開いたってことにも……
小宮山と顔を見合わせると、目が合った小宮山も、どこか安心したような顔をしていて……
「桃城くん、あんなに鳴海さんのこと好きでしたもんね……上手くいくといいな……」
そうポツリと呟いた小宮山は、ハッとした顔をして、慌てて手のひらで口を抑える。
それから、性格悪いですよね、そう言って困った顔をするから、うんにゃ、オレも同じこと思ったよん、なんて言ってニッて笑った。
「英二くんが、笑った……」
ただ笑っただけなのに、小宮山もすげー嬉しそうに笑ってくれて……
あぁ、オレ、もう芽衣子ちゃんのことは、心配しなくてもいいんだよな……
小宮山が許してくれるんなら、また甘えても、いいんだよな……
小宮山のその嬉しそうな笑顔を見ていたら、自然とそう思えてきて……
「不二、いっつも背中おしてくれて、あんがとね……」
『……素直になる気になった?』
「ま、ね、オレ、これからもう一度、小宮山に告白する」
『そう、思いっきり玉砕すればいいのに』
それ、結構、マジだろ?、そう言いながら苦笑いするオレに、さあ、どうだろうね、なんていつものようにクスクス笑う。
相変わらずこんなオレなんかのために、黙って小宮山を譲ってくれる不二に、ほんと、サンキュ、そう心から感謝して通話を終わらせた。
携帯を置くと、顔を上げて小宮山と向かい合う。
オレと不二の会話に目を大きく見開いていた小宮山だったけど、今はおもいっきり眉を下げてポロポロと大粒の涙を流している。
そっとその涙を指で拭うと、少し戸惑いながらその身体を抱きしめた。