第89章 【カイホウ】
「……ゴメンな?、いっぱい傷つけて……」
学校でしがみついていた時にも感じていたけれど、小宮山は付き合っていた時よりずっと痩せてしまっていて……
それは夏に傷つけてしまったあの時と全く同じ感じで……
「いいえ、私なんて全然……それより、英二くんが辛そうなのが苦しくて……」
小宮山の頬にこぼれ落ちた涙は拭っても拭っても、どんどん溢れて止まらなくて……
そっとその目に唇を落とすと、小宮山は顔を真っ赤にして俯いた。
すげー……ドキドキする……
小宮山は本当に、いつだってオレのことを一番に考えてくれて……
傷つけても傷つけても、それで笑って許してくれて……
そんな小宮山の優しさに、もう甘えちゃいけない気がしていたけれど……
また傷つけるのが怖くて、だったら一緒にいない方がいいって思っていたけれど……
それでもやっぱり、小宮山がいないとダメだから……
「これからは本当に大切にするから……もっかい、オレの彼女になってよ?」
「……いつだって言ってるじゃないですか、私は英二くんに『いらない』って言われるまで、ずっと英二くんの側に居ますよ?」
小宮山の両肩に手を添えてその顔を覗き込むと、大好きだよん、そう言ってゆっくりと顔を近づける。
嬉しそうに頬を染めた小宮山が瞳を閉じたのを確認して、オレもそっと目を閉じる。
久しぶりに触れあったその唇は、どこまでも甘く優しい味がして……
オレの心の乾いたひび割れに、いっきに染み込んで潤わせた____