第89章 【カイホウ】
「んで何のようさ……?、小宮山、起こすと悪いからあんま話せないんだけど……」
『うん、そうだね……単刀直入に言うよ?、鳴海さんのことだけど……』
芽衣子ちゃん?、ピクっと顔がひきつって、あからさまに声が不機嫌になった。
いいよ、あいつの話は!そう思わず声が大きくなると、まぁ、ちゃんと聞きなよ、そう不二が携帯の向こうでクスクス笑った。
『……鳴海さんの演技は保健室の方だよ』
その思いがけない不二の話に、なんだよ、それ?、そう答える声が震えてしまう。
本当、なんだよ、それ……?
演技は保健室の方……?
あの保健室で豹変したあとの方が演技っていうのかよ……?
学校であの親子を見ていたら自分を抑えらんなくて、好き勝手言ってるうちに苦しくなった。
押し寄せる不安感に無我夢中で小宮山に助けを求めると、小宮山は約束通り、駆けつけてくれた。
だけど芽衣子ちゃんのことがやっぱり放っとけなくて、本当、酷いのはわかってんのに、また小宮山に謝るしかなくて……
小宮山は相変わらず、すげー辛そうな顔をしながらも、オレの意思を尊重してくれて……
鳴海さんを呼んであげてください、そう言って離れていく背中を見送りながら、引き止めたい衝動を必死に堪えていた。
『当たり前じゃないですか、あんな出来すぎた悲劇なんかある訳ないでしょ?、あの男も、あのアパートも、全部お父さまにオネダリして用意してもらったんですよ?』
オレと小宮山を責めた芽衣子ちゃんの顔つきが急に変わった。
信じらんなくて言葉を失うオレに、芽衣子ちゃんはもう1度嘲笑った。
『……無言電話も、カラオケ店のクーポンチラシも、あの人たちに先輩の画像を渡したのも、全部私がやったんですよ……?』
言葉の意味をまったく理解出来てないオレに、芽衣子ちゃんはそんな絶望的な言葉を浴びせたんだ。