第89章 【カイホウ】
少しだけ気持ちが軽くなって、笑えるようにもなって、でも罪悪感で笑い続けることが出来なくて……
そんなオレに、小宮山が胸を痛めてんのは分かったけど、だからってやっぱり許されるはずないって気持ちが大きくて……
小宮山に思いっきり心配かけてるくせに、一緒にいるとすげー安心できて、発作の疲れだけじゃなく、普段の寝不足もあわさって、ベッドに入った途端、あっという間に眠りについた。
目が覚めると辺りはすっかり暗くなっていた。
カーテンの隙間から差し込む淡い月明かりで、何とか見慣れた天井が確認できる。
何時だろ……?
目を擦りながらゆっくりと起き上がろうとした所で、身体に感じる重みに我に返る。
あ……
ぼーっとする意識がハッキリしてきて、目に飛び込んできたのは、穏やかに寝息を立てる小宮山の寝顔。
大五郎を抱っこしながら、オレの上にもたれ掛かっている。
小宮山……
懐かしい小宮山の寝顔は、相変わらずキレイで、それでいてすげー可愛くて、その無防備な様子に自然と頬が緩んでくる。
少しためらってその頬を指で撫でる……
ふふっと擽ったそうに笑うその様子に、もっと触れたい、おもいっきり抱きしめたい、そんな欲望が顔を出して慌てて指を引っ込めた。
♪~
突然鳴り響いた携帯電話の着信音。
うわっ、オレの!?、慌てて枕元の携帯に手を伸ばす。
ったく、誰だよ、小宮山、起きちゃうじゃん!、そう思いながらみたディスプレイには、こんな場面ですっかり定番になった不二の名前……
少し迷ってから通話をタップすると、不二?、そう小さい声で問いかけた。
『……英二にしては珍しく静かだね?小宮山さん、寝てるの?』
ったく、相変わらずその辺で見てんじゃないのー?、なんて思いながら苦笑いして、もう1度小宮山の寝顔に視線を向ける。
ん、寝てる、そう声を殺しながら返事をすると、小宮山さん、そうとう気を張ってたからね、なんて不二はフフッと笑った。