第89章 【カイホウ】
「ゴメン……小宮山、ほんと、ゴメン……」
苦しい胸を抑えながら、必死にしがみついた小宮山の腕の中で、何度も繰り返す謝罪の言葉。
その度に小宮山は「大丈夫」と繰り返してくれたけど、全然、オレの気が済まなくて……
何度謝ったって足りない。
こんなにオレを想ってくれている小宮山を裏切って、挙句、実は芽衣子ちゃんに騙されていただけで、そのせいで小宮山はカラオケ屋であいつらに輪姦されて……
小宮山の元に戻りたいって強く思った。
でもオレのせいで小宮山があんな目にあったって言うのに、のこのこと戻れるはずなんかないよって思って、でももう小宮山がいない生活なんて考えられなくて、どうしたらいいか分かんなくて……
『あなたが璃音に何をしてきたかは聞いていないけれど、璃音は今までたくさん傷ついて泣いてきたわ』
小宮山のかーちゃんに、すげー痛いところを付かれた。
それはオレが小宮山にしてきたことを思えば、当たり前のことで……
ハッキリと言われて、何も言えるはずもなくて、ただ俯くしかできなくて……
でも、そんなオレに、小宮山のかーちゃんは、ありがとうなんてお礼を言ってくれた。
ああ、本当にこの人は小宮山のかーちゃんなんだ……
このかーちゃんに育てられたから、小宮山はあんなに真っ直ぐで強いんだ……
オレは小宮山を傷つけてばかりだけど、それでもオレがいたおかげだって言ってもらえて、少しだけ心が軽くなった気がした。
小宮山が手を握ってくれたから、戸惑いながらもその指を絡ませると、小宮山はしっかりと握り返してくれた。
小宮山のとこにもどってもいいのかな……?
ほんの少しだけ、そう気持ちが前向きになれた気がした……
だけどやっぱりそう簡単じゃなくて、小宮山はずっとオレに寄り添ってくれていたし、オレも小宮山に甘えたかったけど、やっぱりそんなことできる資格なんてなくて……