第89章 【カイホウ】
「英二、大丈夫だった!?」
英二くんの自宅に到着するとすぐに、玄関から飛び出しきたのは英二くんのお姉さんたち。
下のお姉さんとは以前、不二くんとお邪魔した時にお会いしたけれど、上のお姉さんとは今日が初めてで……
よくよく考えてみたら、英二くんの家に泊まらせてもらうってことは、彼の家族みんなと顔を合わせることになるわけで、しかも英二くんが大変な時に、こんなのやっぱり図々しすぎて……
え、なんで、小宮山さん!?、そう英二くんと一緒に車から降りた私を見て、驚いたお姉さんのその様子に、改めて自分がとんでもないお願いをしたことを思い知らされて、恥ずかしさから小さくなってしまう。
「英二を心配して一緒に来てくれたのよ、今夜、うちに泊まるから」
「え?え?、泊まるってどういう事!?」
「そのままよ、急に決まったから小宮山さん、なにも用意して来てないの、お姉ちゃんたち、必要なもの貸してあげてね?」
「それはもちろん構わないけど……って、わかるように説明してー!」
混乱して頭を抱えているお姉さんたちに「ヨロシクオネガイシマス」そう緊張しながら挨拶すると、「ア、イエ、コチラコソ」なんて2人も慌てて頭を下げる。
そんな私たちの様子を見て、プッと吹き出した英二くんは、なんでカタコトー?、そう言って力なく笑う。
その笑顔はいつもの眩しいものとは全然違う、凄く頼りないものだったけど、それでも彼の笑顔が嬉しくて、自然と涙が溢れてくる。
良かった、そう私が呟くと、英二くんの笑顔はすぐに無くなってしまったけれど、小宮山、いこ?、オレ、少し寝たい……、そう言って手を伸ばしてくれたから、はい、なんて慌ててその手を取った。
そうだよね……
英二くん、倒れちゃったのに、ゆっくり休めてなかったから……
気が張っていた時は忘れてしまっていただろうけど、本当は凄く身体が辛いはずで……
車の中でもぐったりと私に身体を預けていて……
早く横にならせてあげたくて、その思いはお姉さんたちも同じようで、あ、そうね、そう慌てて玄関を開けて私たちを招き入れた。