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【テニプリ】闇菊【R18】

第89章 【カイホウ】




「……ね、英二くん……」


ドアを閉める直前、お母さんが落ち着いた声で英二くんに話しかけた。
まだ光のない目のままの英二くんが、ゆっくりと顔を上げた。
お母さん……?、そう不思議に思ってその先の言葉を見守る。


「あなたが璃音に何をしてきたかは聞いていないけれど、璃音は今までたくさん傷ついて泣いてきたわ」

「お母さん!やめて!」


突然、そんな英二くんを追い詰めるようなことを言い出したお母さんのその言葉は、普段の優しく思慮深いその様子からは想像つかないほど冷酷で、どうしてそんなことを言うの?、そう信じられない気持ちでその言葉を制止した。


そりゃ、お母さんにはたくさん涙を見せてきたけれど、でもお母さんだって英二くんがどれだけ私を助けてくれたか分かってくれているはずじゃない!
それを今、こんなに英二くんが弱っいてる時に、責めるようなことを言うなんて!!


案の定、お母さんのその言葉に目を見開いた英二くんは、すぐに俯いて、すみません、そう震える声で小さく謝ってしまって……
あの、気にしないでください、本当に大丈夫なんですから、そうそんな英二くんに必死に声をかける。


「……でも、璃音、とても人間らしくなれたと思う……こんなに多くの理解者にも恵まれて……あなたがいてくれたおかげね……」


本当にありがとう、そのお母さんの言葉に、もう1度、英二くんは目を見開いた。
璃音、英二くんに出会えて良かったわね、そう言って私に視線を向けたお母さんは、もういつもの優しい笑顔で微笑んでいて、ホッとすると同時に胸の辺りが熱くなる……


「……あ、オレのほうこそ……その……でも……」

「……別にいいのよ、無理しないで……今日はゆっくり休んでね?」

「……はい……」


車が出発すると英二くんと指が触れたから、黙ってその手を握りしめた。
彼は少し戸惑ってから、その指が解けないよう絡めてくれた。

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