第89章 【カイホウ】
どうしたら、英二くんの気持ちを楽にしてあげれるの……?
英二くんの震える手は、しっかりと私の腕を握っていて、自惚れじゃなく、彼に必要とされていることは間違いないのに……
とにかく、家に……なんて言って英二くんのお母さんが先生に挨拶しながら、英二くんのカバンに手をかける。
ダメ、今、英二くんから離れたら、きっと英二くん、苦しみ続ける……
明日から振替で学校は二連休……
そんなに英二くんが辛い思いをし続けるなんて、それだけは絶対にダメ!!
具体的には、何をどうしたらいいかなんて全然分からなかったけど、そのまま英二くんから離れるわけにはいかなくて……
私が出来ることは、ずっと側にいてあげること、それだけは確実に分かっていて……
「……英二くん、ちょっと待っててくださいね?」
不安そうな顔をする英二くんに笑顔を向けると、ゆっくりと立ち上がり、英二くんのお母さんの前まで歩み寄った。
みんなの視線が集中する中、あの……お願いがあります、そう言って深々と頭を下げた。
「私も、一緒に行かせていただけませんか?」
璃音!?、小宮山さん!?、そう周りから驚きの声が上がった。
えっと、ちゃんと説明して?、そう戸惑いながら、英二くんのお母さんが私に頭を上げるように声をかけた。
やだ、私、また言葉たらなかった!?
ご、ごめんなさい!、そう慌てて頭を抱えて首を横に振ると、大きく深呼吸して、なんとか気持ちを落ち着かせた。
「図々しいお願いで申し訳ありませんが、今晩、私を泊めていただけませんか?」
英二くんが落ち着くまで、ずっと側にいたいんです、そう英二くんのお母さんの顔を真っ直ぐに見つめると、もう1度しっかりと頭を下げた。
「あの、小宮山さん、泊めてって言われても……」
私のその突拍子もない申し出に、明らかに英二くんのお母さんが戸惑っていた。
でもそんなの、親なら当たり前の反応だ。
私たちはまだ高校生、なんの責任も取れない子供の分際で、そんなこと簡単に許される筈なんかなくて……