第88章 【キクマルサン】
「何がバカなのよ!お父さまは本当にお母さまを愛していたのよ!それをあんた達がたぶらかして!!お父さまの財産目当てなくせに!」
「だったらどうだっていうんだよ?、たぶらかされる方がバカなんだろ?そんでママに鼻の下伸ばしてんだから世話ないよな」
お父さまを侮辱しないで!、思わずカッとして手を振りあげた。
もうずっとお父さまに良い感情なんてなかったけれど、はっきりバカにされると怒りが湧いてきて……
だけど、私のその手は簡単に掴まれてしまって、そのまま押し倒されて馬乗りになられる。
「イヤって言ってるでしょ!離して!離してったら!」
「ほんと、お前も強情なやつだな!どうせ無駄なのは分かってんのによ!」
バシッ、頬に走る鈍い衝撃……
ジンジンと広がる熱さを感じるまもなく、乱暴に身体を晒されていく……
グプリと乱暴に捩じ込まれ、激しい痛みが襲う。
イヤァ!、痛みと悔しさと、それから屈辱の涙が溢れる……
本当にいつまでこんなことが続くの……?
もう1年以上、こうして力づくで……
菊丸さん……会いたい……
あの関東大会で好きになって以来、青学の試合には必ず応援に駆けつけた。
残りの関東大会、全国大会と、菊丸さんのプレイに勇気をもらった。
菊丸さんが引退して、でもそのまま青学に進学したと聞いて、今度は高等部の応援に行ってみたけれど、不二さんや乾さんは試合に出ているのに、菊丸さんの姿は見えなくて……
菊丸、さん……
「奥さま、お待ちください!今は、その……」
「何やってるの!あんた達!!」
バタンと大きな音を立てて部屋のドアが開いた。
驚いて振り向くと、そこに居たのはあの女と、慌てて止めに入った家政婦さんの姿……
無理やりヤられて涙を流す私と、突然のことに驚いて固まる義兄を見て、イヤァー!、そうあの女は叫び声をあげる。
慌てて私から離れた義兄と入れ違いで駆け寄ってくれた家政婦さんが、お嬢さま、お召し物を……!、すぐに冷やすものをお持ちしますから、そう言って私を気遣ってくれた。