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【テニプリ】闇菊【R18】

第88章 【キクマルサン】




「大丈夫だよ、桃……」


菊丸さんの落ち着いた声がコート内に響き渡る……


「諦めるな!、諦めなけりゃ必ず弱点は見えてくるんだ、チャンスはどっかにあるハズ、オレ達の力を信じよう」


……なーんて、全部大石のウケウリだけどねん、そうウインクをしてペアの選手を励ます菊丸さんのその言葉に、身体の奥底から震えるような感覚を覚えた。


「大丈夫だよ」

「諦めるな」


それはまるで自分に言われているようで……
もちろん、それがただの錯覚なのはわかっていたけれど、その真剣な表情や、はちきれそうな笑顔から、一瞬たりとも目が離せなくて……


熱くなる胸をギュッと抑えて、頑張れ、頑張れ、そう敵チームなのに何度も心の中で唱え続けた。
これが恋だと自覚するのに、時間なんてかからなかった。


菊丸、英二さん……


「やだ、ちょっと、急に青学強くなったんだけど!やーん、忍足先輩!向日先輩!頑張ってー!」


友人の悲痛な叫び通り、それ以降、菊丸さんたちの動きが良くなって、逆に体力を使い果たした向日先輩のガス欠とか、タイミングをずらされた忍足先輩のミスだとかで、そのまま青学が6ゲームを連取すると、見事にダブルス2を制した。









「やめて!離して!いい加減にして!」

「チッ、なんだよ、最近大人しかったのに、ウルセェ!だまってヤらせろよ!!」

「イヤよ!叩きたかったらいくらでも叩けばいいじゃない!どんなに叩かれたって、私、もう諦めないからっ!」


それからは、あの男が私の部屋に来ても、また全力で抵抗をするようになった。
殴られて痛かったけど、身体中、アザだらけになったけれど、決して暴れるのをやめなかった。


『諦めるな!、諦めなけりゃ必ず弱点は見えてくるんだ、チャンスはどっかにあるハズ、オレ達の力を信じよう』


挫けそうになる度に、何度も頭の中で菊丸さんの言葉を思い出した。


諦めない……
絶対、もう二度と言いなりになんかなったりしない……


いつかこの出口の見えないトンネルに、光が指す日が来る……
そう信じて耐え続けた……

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