第87章 【ホットケナイ】
「無言電話も、カラオケ店のクーポンチラシも、あの人たちに先輩の画像渡したのも、全部私がやったんですよ?」
な、んて……言ったの……?
鳴海さん、今、なんて……?
鳴海さんのその信じられない言葉を、何度も頭の中で繰り返した。
何度か掛かってきた無言電話……
持ち主のわからないカラオケ店の割引券……
私の顔と名前を知っていた、英二くんの昔の仲間たち……
アレハ アナタガ シクンダ コトダッタノ……?
途端に思い出すあの男たちの感触……
サーと引いていく血の気、ガクガクと震えだす身体……
『カシ……?、ああ、夏にナンパした可愛い子を譲ったあれ?』
『そ、あるスジから、璃音ちゃん回してもらったんだよねー』
あの時のカラオケ店で聞いた会話……
それじゃ、あるスジって、鳴海さんのことだったの……?
もしかして、英二くんに譲ったって可愛い子も鳴海さん……?
いやぁ……!、その身体を抱えてうずくまると、みんなが心配して駆け寄ってくる。
そんな私をを見下ろしながら、やっと見られた、あんたのその顔、そう言って鳴海さんはまた歪んだ笑みを浮かべた。
「ふざけんな!自分が何したか分かってんのかよ!」
私と同じように呆然としていた英二くんが、我に返り鳴海さんに掴みかかろうとする。
英二!、ダメだ!、慌てて不二くんがそれを制すると、何で止めんだよ!そう英二くんはもう一度大声をあげた。
「小宮山が!、こいつのせいで、小宮山が!!、不二だって頭にこないのかよ!?」
「もちろん許せないさ!、それでも抑えるんだ」
相手は女の子だぞ、その不二くんの言葉に、なんとか掴みかかるのを我慢した英二くんだけど、それでもその怒りは相当なもので……
まるで、空港でナオちゃんたちから助けてくれた時や、あのカラオケ店で男の人たちに殴りかかった時と同じようで……