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【テニプリ】闇菊【R18】

第86章 【トクベツナバショ】




「……オレも小宮山、すげー、好き……」


腕の中の英二くんが、そう安心したように呟いた。
うん、大丈夫、分かってる……


『英二にとって、小宮山さんは特別な人』


まだセフレだった頃、不二くんに言われてとても信じられなかった。
だけど英二くんの過去に触れて、その言葉を確信した。
英二くんと付きあえるようになって、でも離れなきゃならなくなって、もう私は必要ないんだって諦めようとした。


でも英二くんの手首に貼られた絆創膏に気がついて、もう一度、私じゃなきゃダメなのかも?って思えたのに、あのカラオケ店での事があってから、もうそれどころじゃなくなっていて……


だけど避け続ける私を、英二くんはこうして必要としてくれた。


良かった……英二くんが苦しい時に、ちゃんと駆けつけることが出来て……


体育館裏の茂みの中で、お母さんに英二くんの話を聞いてもらった。
お母さんは私の話を黙って聞いてくれて、それからしばらく一緒に空を眺めた。


「さ、璃音の気持ちも聞けたし、お母さんはそろそろ帰るわね」


帰る前に不二くんやテニス部のみんなに挨拶するという母を連れて、テニス部の模擬店まできたところで、英二くんが一般のお客さんにキレている、そんなとんでもない噂を耳にした。


英二くんに限ってって思いながらも、慌てて不二くんたちと現場に駆けつけてみると、辺りはすごい人混みになっていて……
周りの生徒達に何があったのか聞いたら、子どもを叱りつけていた母親に英二くんが食ってかかって、まるで人が変わったようだったって教えて貰った。


英二くんの生い立ちを知っている私たちは、それだけで何が起こったのかすべてを理解できて……
彼の精神状態を心配していると、そのうち人混みの前の方から、英二くんが倒れたって騒ぎ声が上がった。


その瞬間、もう頭の中は真っ白になって……


英二くんが苦しんでいる、そう思ったら、無我夢中で人混みをかき分けていた。
なかなか前に進めなかったけれど、必死に英二くんの名前を呼んで、なんとか抜け出した人混みの先……


苦しそうにうずくまる英二くんが、必死に手を伸ばして私を求めてくれていた。

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