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【テニプリ】闇菊【R18】

第86章 【トクベツナバショ】




「ヤダ!、まだ帰りたくない!!」

「ダメよ、夕方には帰るって約束だったでしょ?、ほら、もう行くよ?」

「ヤダー!、最後まで遊ぶんだー!」


食べ終わったかき氷の容器をリサイクルステーションに捨てに行くと、ふと耳に届いたそんな会話。
声色と会話の内容から言って、まだ幼い男の子とその母親。
ちらりと視線を送ると、ヤダヤダヤダヤダ!そう手足をばたつかせた男の子が地面に寝転んでいる。


そろそろ怒られるぞー?、なんて微笑ましく眺めていると、その瞬間、母親の顔つきがガラリと変わった。


「いい加減にしなさいよ!!」


母親の怒鳴り声に、顔をこわばらせた男の子が慌てて立ち上がる。


ドクン____


心の奥底から沸き起こる不安感……
なんだよ、コレ、慌ててグッと身体を抱えて縮こまる。


こんなの、よく見る光景じゃん……?


それは、ときどき遭遇する日常の一コマ。
ワガママを言った子どもを母親が怒るなんてよくある普通の……


普段、スーパーなんかで見かけても、別になんとも思わないのに……


「あんたはどうしてママのいうことが聞けないの!?」

「ごめんなさい!ママ、ごめんなさい!」


男の子の身体を揺すりながら怒鳴りつける母親と、必死に謝る男の子のその様子に、恐怖と不安が全身を包み込む。


ダメだ、これ以上、ここにいちゃ……


そう頭ではわかってんのに、身体は太く重い鎖で縛り付けられたように、そこから逃げ出すことも出来なくて……


その母親の剣幕に、ザワザワと騒ぎ出す周辺の生徒達。
なにあれ、可哀想……、そう芽衣子ちゃんも怪訝そうな顔で親子連れを見ている。


「せっかく連れてきてあげたのに!」

「なんであんたはそうやって怒らせるようなことばっかするの!」

「この前も、その前も、同じことの繰り返しじゃないの!」


次々の繰り返される母親の罵声は興奮度を増していって……
それと反比例するように、子どもはすっかり萎縮してしまっているようで……

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