• テキストサイズ

【テニプリ】闇菊【R18】

第85章 【マドノムコウ】




嫌がる小宮山をグイグイ引っ張って、向かったのは近くの水飲み場。
火傷してる、そう告げて勢いよく蛇口を捻ると、自分の手ごと小宮山の火傷に水をかける。


「ちょっと、英二、どういうつもり……って、璃音、火傷してたの……!?」


オレの行動に怒りをあらわにしていた市川が、小宮山の火傷に気がついて、オレを責める声を小宮山への気遣に変える。
ずっとオレの手を振り払おうとしていた小宮山も、腕の力を抜いて抵抗するのをやめた。


やっと触れられた小宮山の手首を握りしめていると、そのまま思い切り引き寄せてしまいたくなる。
小宮山に別れを告げた時も、教室で寝ぼけたときも、触れてしまえば我慢が出来なくて……


「え、英二くん……鳴海さん、待ってますよ……」


ズキン____


抱きしめたい衝動を必死にこらえているところに呟いた小宮山の一言……
一気に現実に引き戻される……


もしかしたら、まだ少しはオレの事想ってくれてるのかもって、さっきの淡い期待が、ただの自分勝手な自惚れだったって、はっきりと思い知らされて……


「____言われたくない……」


止まらなかった……
言っちゃ、ダメだ、そう何度も頭の中で自分に言い聞かせたんだけど、ホテルで芽衣子ちゃんのところに戻れって言われた時もそうだったけど、小宮山に言われるのは耐えられなくて……


「小宮山だけには、言われたくない……」


え?、そう聞き返した小宮山に、もう一度、今度はしっかりと言葉にする。
小宮山だけは、言わないでよ……、力なく呟いたオレを小宮山は不思議そうな顔で見ていた……










本当は分かってるんだ。
ずっとこのまま小宮山の手を握ってなんかいられないことに……
この手を裏切った自分には、そんな資格なんてないってことに……


それでも離れたくなくて、さっきからうるさく鳴り響いてるミスコンの放送も、きっと芽衣子ちゃんからのLINEの通知音にも、何もかもに気が付かないふりをし続けた。

/ 1433ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp