第15章 【アマクテニガイ】
「おー、ほんとだ、あん時のおチビちゃんじゃん!」
私の部屋に入ると、みゃあとすり寄ってきたネコ丸を抱き上げ英二くんがそう言う。
お前ほーんと愛想いいね、そうゴロゴロと喉を鳴らすネコ丸に、だから言ったろ?心優しい誰かが拾ってくれるって、そう言って彼は優しい瞳で笑う。
そんな様子にあの雨の日の彼を思い出し、キュンとなる胸を握り拳でギュッと抑えた。
「そーいや、小宮山のとーちゃんってどこに単身赴任してんの?」
私の机の上の家族写真を眺めながら英二くんがそう問いかけるから、イギリスです、と答えると、……流石、小宮山のとーちゃんだね、そう言って彼は苦笑いをした。
かーちゃんは何時くらいに帰ってくんのさ?そう続けるから、7時くらいです、と答えると、んじゃ、今日はゆーっくり楽しめんね?そう言って彼はベッドにジャンプして私に手招きをした。
恥ずかしくて俯きながらそっとベッドに登ると、ギシッとベッドが軋んでその音がますます恥ずかしさに拍車を掛ける。
「……小宮山からキスしてよ?」
そう言われて目を泳がせると、不二にはした癖にオレにはしてくんないのー?そう言って英二くんはイジケた振りをする。
だってそれは……と涙目になる私にかまわずに、英二くんは、はーやーくー、そう頬を膨らませる。
そんな英二くんを見ていたら、これが彼の演技なのは分かっていても、仕方がないなって気分になってきて、そっと身体を伸ばし彼の唇に触れるだけのキスをする。
そんな私にもう終わり?なんて彼が聞くから、え?って思って彼を見ると、そんなの不二とおんなじじゃーん、そう言ってまた頬を膨らませた。
ああ、私、やっぱり彼の思う壺……そう思いながらもう一度唇を重ね、そっと舌で彼の唇に触れると、英二くんがそれを受け入れてくれる。
英二くん、好き、大好き……
言葉にできないこの想いを、少しでも彼に伝えたくて、彼の背中に腕を回すと必死に舌を絡ませた。