第15章 【アマクテニガイ】
「……小宮山ん家、今日誰かいんの?」
家の前まで来ると、良かったら上がっていってとの私の申し出に、英二くんは、んーっと少し考え込んでそう口を開いた。
なんでですか?って聞くと、オレってば小宮山の親にあわす顔ないじゃん?、そう言って苦笑いをするから、その様子がおかしくてクスクス笑った。
「安心してください、誰もいませんから、お父さんは単身赴任だし、お母さんも休日出勤なんです」
そう言う私に、ふーん……小宮山ってばだいたーん♪、そう英二くんはニヤリと笑うから、その言葉の意味に気がついて、慌てて顔を真っ赤にする。
「ち、違います!お礼にお茶でもって思ったんです!返したいものもあったし……」
でも、もういいです、そう頬を膨らませて英二くんから奪うようにネコ砂を受け取ると、本当にありがとうございました!、そう言って無理やり玄関のドアを閉める。
閉めようとしたところで、まあまあ、冗談だって、そう英二くんは閉めるドアを手で押さえ、お邪魔しまーすと強引に中に入ってくるから、全くもう、こんなところは天真爛漫な菊丸くんのままだね、そう思いながら招き入れた。
家に入るとすぐに、ネコ丸はー?そう英二くんはキョロキョロしながら辺りを見回す。
たぶん私の部屋だと思います、そう言いながらキッチンで、コーヒーでいいですか?、そうお茶の準備をする。
アイスコーヒーにミルクとガムシロップを添えて、それから買い置きのマカロンも一緒に用意した。
「連れてきます?」
「いんや、今から行くからそん時でいいや」
そう言いながらリビングのソファーに腰掛ける英二くんは、アイスコーヒーをブラックのまま口に含む。
きっと学校での英二くんしか知らなかったら、ブラックコーヒーなんて意外だと思っただろうな、なんて思いながら、あれ?っと動きが止まる。
「え……今から行く?」
「ん、それともここでする?オレはどっちでもいいよん?」
するって……?、そう彼に問いかけると、んなこと決まってんじゃん?、なんて言って英二くんはニヤリと笑った。