第85章 【マドノムコウ】
学園祭2日目は芽衣子ちゃんのために一日中あけてあって……
朝から、芽衣子ちゃんの望む模擬店を片っ端から回って……
だけど男子テニスの仲間と桃、それから、特に小宮山にだけは顔を合わせないように充分注意を払っていたから、ぜんぜん心から楽しめなくて……
まぁ、芽衣子ちゃんと一緒にいて、心から楽しめたことなんて、付き合い出してからはないんだけどさ……
本当、オレって酷いやつだよな……
今更、なんだけど……
「先輩、ミスコンは午後2時からですからね、私はこの後すぐに行ってドレスアップしてもらいますから、先輩は1時半くらいまでには会場に入ってくださいね」
どこかのクラスの模擬店でお昼を食べながら、芽衣子ちゃんが午後のミスコンの予定を再確認する。
この後はとうとうミスコンで、その時間小宮山はクラス模擬店の当番になってるはずで……
その姿を見られることはないだろうけど、多分、あの場所じゃ音声はガンガン聞こえてくるはずで……
小宮山はそれをどんな思いで聞くんだろ……
もう、先輩、またボーッとしてる!、そう不満を漏らす芽衣子ちゃんの声にハッとする。
ほいほーい、大丈夫だよん、そう返事をしながら、笑顔の奥に小宮山への想いを封印した。
男子控え室でスーツに着替えると、ワックスで髪を整えながら、男ってつくづく楽だよな、なんて鏡の中の自分を眺める。
男は着るものが違ったって大して変わらないけれど、女の子は小宮山や芽衣子ちゃんも、かーちゃんやねーちゃん達だって、出かけるとなると大騒ぎで……
でも時間をかけてお洒落すれば、やっぱりみんな普段とはひと味違う雰囲気になって……
そういや、あの女も仕事に行く前はすげー入念に化粧して、表面だけ取り繕って出かけていってたっけな……
ドクン____
思わずどうでもいいことを思い出し、ブンブンと大きく首を振る。
もうそんなこと、カンケーないじゃん……?
ゆっくりと大きく深呼吸して、胸のざわめきを誤魔化した。