第85章 【マドノムコウ】
オープニングイベント、ステージの上でダンスを踊りながら目が合った小宮山は、その瞬間、慌てて体育館を後にした。
思わず動揺してミスった振り付け、なんとかアレンジして誤魔化した。
一緒にステージに立っていた奴ら以外には気づかれなかったけれど、その後のショックは大きくて……
約束の時間になっても顔を見せない大石のことが気になって、校門まで見に行ったら受付をしているところを発見して、勢いよく飛びついたら、対応していたのは生徒会の仕事中の小宮山で、目が合った途端、すごい勢いで逃げられて……
「小宮山、待って……!」
思わず呼び止め追いかけようとしたオレを、不二が鋭い目で制止した。
英二が行ってどうするの?、その冷たい声に何も言えなくて……
「……ゴメン、不二、小宮山を頼むよ……」
ただ、そう呟くのが精一杯で……
前に市川にも言われたな……そう思いながら、小宮山を追いかけて走り去る不二の背中を下唇を噛んで見送った……
「……英二、お前、本当はまだ小宮山さんが……」
「それ以上、言わないでよ……大石……」
オレ、芽衣子ちゃんの彼氏だよん?、そう顔を上げて二パッと笑っと、大石はオレのことなのに辛そうな顔をして、それから、それで幸せなのか?、そう絞り出すように呟いた。
オレが幸せかどうかなんてカンケーないんだって……
ただ、芽衣子ちゃんを幸せにしてやりたいだけで……
あの頃のオレがそうしてくれって、ずっと暗闇の中から訴え続けてきて……
そういや、オレ、いつの間にか、また暗闇の中に来ちゃったんだな……
高く青い空を仰ぐ。
精一杯背伸びをして、両手を高く伸ばす。
「大石……空ってさ、いくら手を伸ばしても届かないんだよな……」
ジャンプしたら届くかな……?、そう言ってグッと身体を沈めると、思いっきり地面を蹴って限界まで飛躍する。
だけど当然、空にまで跳べるはずなんかなくて、やっぱダメか~、そう大石に力ない笑顔を向けた。